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「ニューカラー」を代表するジョエル・マイロウィッツの写真集を眺める。

Editing by Design Studio Paperweight INC

2021.05.10

人工的なものと自然が見事に解け合う印象的で豊かな色と、静謐な描写が特徴的なジョエル・マイヤウィッツの写真を好きになって随分経つ。8X10の大型カメラとカラーネガフィルムを駆使して、1970年代のアメリカ写真界をリードしたニューカラーグループの代表的な写真家だが、現在もCGや高解像度カラープリンター、ネット発信を表現に取り込む等、意欲的な活動を続けている。

私は1983年位にニューカラーの作家ばかりを集めた作品集を手に入れ、斬新な構成やモチーフ、色彩表現に衝撃を受けた。その後、アメリカを旅行した折に美術館やギャラリー等でオリジナルプリントを観る機会が何度もあり、更にその影響下にあったのだが、作家によっては政治的であったり性的表現が激し過ぎて、精神的に受け付けないものも徐々に増えて来た。私のアメリカ情景の出発点は、エドワード・ホッパーの風景画や少年の時から読んでいるレイ・ブラッドべリの世界だ。ジョエル・マイヤウィッツの写真にはその精神が宿っている気がした。懐かしさと寂しさと切なさが入り混じったその写真作品は、私を虜にした。

ジョエル・マイヤウィッツはたくさんの作品集があるが、私がとりわけ好んでいるのは静かな海辺が主役である『CAPE LIGHT』『A Summer's Day』『BAY/SKY』だ。

『A Summer's Day』はロードアイランドの海の周辺風景を7年間かけて撮影し、夜明けから夜更けまでの1日の物語として写真集にまとめてある。遠い夏の日の記憶が呼び起こされるような、何とも言えない気持ちになる。

「静かな朝だ。町はまだ闇におおわれて、やすらかにベッドに眠っている。夏の気配が天気にみなぎり、風の感触もふさわしく、世界は、深く、ゆっくりと、暖かな呼吸をしていた。起きあがって、窓からからだをのりだしてごらんよ。いま、ほんとうに自由で、生きている時間がはじまるのだから。夏の最初の朝だ」 レイ・ブラッドベリ『たんぽぽのお酒』より

 

ジョエル・マイヤウィッツ を知る7選。

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