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少年の心に愉快痛快を感じさせ、そしてブラックユーモアまで教えてくれた赤塚不二夫。没後10年経っても更にその笑いの輝きは増し続けている。

Editing by Design Studio Paperweight INC

2018.07.11

赤塚不二夫の漫画を、ぼくは子供の頃、夢中になって読んだ。『天才バカボン』『おそ松くん』『もーれつア太郎』『ひみつのアッコちゃん』『レッツラ☆ゴン』等有名なものは勿論無名なものも全て読んでいるし、1966年にテレビアニメ化された『おそ松くん』や、1969年に同じくテレビアニメ化された『ひみつのアッコちゃん』『もーれつア太郎』、1971年にテレビアニメ化された『天才バカボン』は放映当時は毎週欠かさず観ていた。どれもみな面白かった。観れば必ず愉快な気持ちになる事が出来た。赤塚作品のオリジナリティ溢れる痛快さを改めて考えてみると、ぼくの世代は大変な影響を受けているはずだ。ぼくと同世代の漫画家、例えば江口寿史のギャグ作品を読むとそう思う。

赤塚作品以外にも、彼の仲間だった石ノ森章太郎、藤子不二雄、横山光輝、つのだじろう等の作品群もぼくはたくさん読んでいるが、その漫画達の影響力が混ざり合ってもどこからが赤塚不二夫の影響かは分かる。特別だったのだ。

子供は想像によって様々な非現実の世界を頭の内部に作り上げる。それも又子供にとってもう1つの現実なのだ。非現実をどの様に育んだら良いか、そして更に楽しむにはどんな方法があるかを漫画は教えてくれた。赤塚不二夫の漫画以外に、ぼくはアメリカンコミックスから大きな影響を受けている。叔父さんがアメリカ土産にくれる、DCコミックスやマーべルコミックスのスーパーヒーローが大好きだった。子供のぼくは、日本の漫画週刊誌や月刊誌にはまるで興味が無かった。前述の日本の漫画家達を読むきっかけは、やはり叔父さんのところにあった筑摩書房の『こども漫画傑作選』という単行本だった。友達が回し読みしているドメスティックな劇画はぼくには合わなかった。品が無く、けち臭い感じがしたし、広がりやアイデアを感じ無かった。勿論持ち前の好奇心を発揮して様々なものを読んだが、赤塚不二夫とその仲間達以上のものは無かった。バットマンやスーパーマン、マーベルヒーローズと、ニャロメやレレレのおじさんが、ぼくへの影響をお互いに相乗して与えていた。

ぼくはアメリカ映画のコメディ作品できちんと笑う事が出来る。日本人が最も苦手とする部門だ。コメディ映画は当たらないと言われて久しいが(皆がコメディだと思っている作品の殆どはヒューマニズムがテーマだったりする)、意味の無いドタバタ喜劇は、ぼくにとってどれもこれもお馴染みのものだ。古くはバスター・キートンやチャップリン辺りだが、赤塚不二夫が既にそのアイデア展開や演出の方法論を子供のぼくに教えてくれていた。激しいドタバタも会話のナンセンスも知っている。Saturday Night Liveの連中がやる事なんて赤塚不二夫そのままじゃないかと思う程だ。シンプソンズだって元ネタは『天才バカボン』じゃないかな。アメリカ生まれでも無いぼくが、きちんとアメリカンスラプスティックコメディを笑う事が出来るのは、アメリカンコミックスと赤塚不二夫のお陰なのだ。

ぼくはとりわけ『天才バカボン』の主要登場人物、バカボンのパパが好きだ。皮肉っぽいブラックなユーモアセンスも持ち合わせていれば、天真爛漫ないい加減さもある。作品の中にはうさん臭さやセコさ等まるで無い。ぼくはけち臭いのが大嫌いだ。それはバカボンのパパに学んだ。赤塚作品を通して、ぼくは心から笑う事も、その笑いを上質に維持する方法も学んだ。無邪気でいて、同時に批評精神を持つ大人でもあるキャラクター達を生み出した赤塚不二夫。今頃天国でも大活躍していることだろう。素敵な漫画をぼく達に与えてくれた希代の天才に感謝したい。

赤塚不二夫を知る、オススメの5冊。

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