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『The New Yorker』は、 洗練されたユーモアと批評精神で知られたアメリカの文芸雑誌。1925年の創刊から多くの愛読者に支持され、毎号の表紙が素晴らしい。

Text & Illustration by Yoshimi Yoshimoto (Design Studio Paperweight)

2019.01.11

ぼくは子どもの頃から一こまマンガが好きだった。勿論時事批評的なもの等はさすがに理解出来なかったので、アイデアや絵のおかしさで魅せるタイプを切り抜いては、スクラップブックに貼付けて集めていた。叔父が購読する洋雑誌類にそれらは多く掲載されていた。雑誌が古くなると叔父はぼくにくれた。写真や記事が主体の『LIFE』『TIME』『National Geographic』等の中に、とても素敵な雑誌が入っていた。『THE NEW YORKER』というタイトル位は子どものぼくにも読めた。

表紙が華やかで、楽しい気分を誘う一こまマンガがいくつか掲載され、デザイン自体も気が利いた感じがあった。創刊が1925年の、ニューヨークの地域情報と文芸、批評精神溢れるコラム、詩、ジャーナリズム性に富む内容で成り立つ雑誌との最初の出会いは、絵本を見る感覚と同じだった。いくつかの表紙を並べては、その多様な手法をいつ迄も飽きる事無く眺めていた。

政治経済風俗その他常識が判断出来て、英語を解する年になっても、一こまマンガにおけるブラックユーモア的な見せ方、読者に対し高圧的かつ哲学的な手法をあまり好まなかった。青年期に読み始めた『PLAYBOY』の艶っぽい一こまマンガの方が扇情的である分、アイデアがストレートに表現されていると思った。ユーモアとは説明を欲するものでは無いし、「思わず」クスッと笑ってしまうものでは無いか、と偉そうにも解釈しては、更に素敵な表紙と一こまマンガは無いものかと、『THE NEW YORKER』のバックナンバーを集めた。

後年調べてみると、1950~1960年代が一こまマンガの全盛期で、『THE NEW YORKER』のそれらは世界中のイラストレーターや漫画家に影響を与えていたらしい。そしてその頃多くの優れた絵本作家を排出しているのも特徴的だ。絵本の傑作マドレーヌシリーズを生んだベーメルマンス、『ロバのシルベスターとまほうのこいし』のウィリアム・スタイグ、『大雪のニューヨークを歩くには』のジェイムズ・スティーヴィンソン、『しろいうさぎとくろいうさぎ』のガース・ウィリアムズ、『オリビア』のイアン・ファルコナー…。

ジャン=ジャック・サンペやアンドレ・フランソワはフランス本国でも評価は既に高かったので別格だろう。いずれの作家もコミカルな手法や豊かで優しい表現がしみじみ心に響く。そう言えば『THE NEW YORKER』で活躍していた頃の彼らの作風も又、人への愛情に満ちたものだった。

『THE NEW YORKER』の豊富な一こまマンガは、今すぐにでも同雑誌サイトのオンライン版のコンテンツ、「カトゥーン・バンク」で楽しめる。見逃した週をオンラインで再チェックする事も可能だ。しかし多くはプリント・ヴァージョンには遠く及ばない感じがするのだ。手に取ると出版物ならではの迫力や思いが伝わって来る。特に表紙にはその力がある。

多くのアメリカの雑誌、絵本、リトルゴールデンブックス、10セントコミックスがそうである様に、古き良き時代の出版物にはある種のノスタルジーが伴う。そのノスタルジーとは、失われつつある健康的な生活や精神であり、人間が人間らしく、未来を見つめた幸福な頃を懐かしく思う事では無いだろうか。

 

The New Yorkerを知る、オススメの3冊。

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